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〇〇に学ぶシリーズ

三好春樹さんに学ぶ「障害受容って結局のところ諦めでしょ」

 

障害受容過程とは、障害を負った人が「ショック期」「否認期」「混乱期」の段階を経て、最終的に「受容期」に至る過程のことを示す。しかし人間の心はとても複雑。受容期まで来たと思われた人が、ちょっとしたきっかけですぐ否認期になったり混乱期になったりするのだ。

行ったり来たりの障害受容…、今回は訪問リハビリで出会ったCさんの事例を通して「障害受容過程」について考えてみたい。

 

事例検討

Cさん68歳。脳動脈瘤の後遺症で、物が二重に見える「複視」に苦しんでいる。だから気持ちも塞ぎ込み、家に閉じこもる事が多い。

通院している医者からは、次のように言われたという。

『病というのは避け難い事実である。その時にあたって医療に人事を尽くして神に平易を願えば自ずと病を楽しむ心根が生じる』

「病を楽しみなさいって...そんなこと言われたって無理よ。物が2重に見えるんだから、わたしの辛さは分からないのよ!」と言い放つCさん。そうは言うものの、医者が言った長文を細かくはっきり覚えているあたりは藁にもすがりたいのだろうか。揺れ動く心のもどかしさが透けて見える。

 

ホタル観賞で見たものは…

ある日の事。毎日家に閉じこもっているCさんを心配して、お孫さんが「ホタル観賞」に誘い出してくれた。「物が2重になって見えないよ」と言いつつも、大好きな孫さんの誘いだったので、重い腰を上げて行くことにしたそうだ。

山道を歩くこと10分。ようやくたどり着いたCさんの目に飛び込んできたものは…!

「川面に広がる蛍光」と「乳白色の星屑」。複視で2重に連なるその光景は、この世の物とは思えないほど感動的で、三途の川を渡っちゃったのかと思ったとの事。

 

物が2重に見える後遺症も、見方を変えるとプラスになるんだなぁ...と妙に納得したCさん。なんと次の月からデイサービスに通い始めたのだ。

障害受容…。とても難しい問題だが、こんな所に紐解くヒントが隠されているのかも知れない。

 

安心したのも束の間…

新しく通い始めたデイサービス。楽しく続けているようだったが、ある日事件が起きた。認知症予防の計算問題が出来なかった事を、向かいに座るPさんに馬鹿にされたという。

「えー、そんな簡単な計算も出来ないの〜!」

「私は物が2重に見えるから、問題が読めなかっただけなのに…」。悲しそうに話すCさん。この件以来、デイサービスに行かなくなってしまった。

ホタル観賞を機に、自分の障害を「受容」出来たかに見えたCさんだったが、また家に閉じ籠り振り出しに戻ってしまったようだ。

 

障害受容過程とは

さて、今回のCさんの心の変化を「障害受容過程」で考えてみよう。障害受容過程とは、「ショック期」「否認期」「混乱期」を経て「受容期」に至る心理過程を指す言葉である。

障害受容過程

 

注意

上記は障害受容過程を「4段階」で示しているが、通常は「ショック期→否認期→混乱期→解決への努力期→受容期」の5段階とする事が多い。コーン(1961)の5段階、フィンク(1967)の4段階 、キューブラ・ロス(1969)の5段階、上田の5段階などがある。

 

①ショック期

病気や怪我をして間もない時期。大変非現実的に物事を捉える時期である。周りの人が「怪我を負って可哀そうに」と思うのだが、本人はあっけらかんとして、至って平気である。人は、物凄い状態に直面すると耐えられないので、現実に起きていることを自分の事として感じないようにしているともいえる。

ショック期

 

②否認期

自分の病気や怪我が治らないっぽい…という事実を打ち消す心理状態の時期である。自分では耐え切れない事態を直視することが出来ず、かといってショック期のように現実から逃げているわけにもいかないので、「そんな事があるはずがない」と心理的に打ち消すのである。

否認期

 

③混乱期

自分の障害を否認したいが、現実に抗しきれない。現状を理解し混乱を来たす時期。自分の置かれた状況を理解し、どうやら治らないかも知れないことを否定できなくなる。大変不安定な時期で、感情的・攻撃的・自虐的になったりする。

混乱期

 

④受容期

様々な葛藤の中で今の状況を少しずつ理解し、現状の自分を受け入れ受容する時期。自分の価値は障害によって変わるのものではなく、障害と共に生きる事を受け入れる時期である。

受容期

 

さて、ホタル観賞をきっかけに「受容期」へ至ったと思われたCさん。問題が解けなかった事を馬鹿にされ、また不安定な気持ちに戻ってしまった。果たしてCさんの心に何が起こっているのだろうか。

 

揺れ動く心

「障害受容」に関して、理学療法士の三好春樹氏は次のように述べている。

障害受容のこれまでの考え方は段階説。「1ショック期」「2否認期」「3混乱期」を経て「4受容期」に至るとされる。しかし私はこれに少し批判的だ。1,2,3を経て4受容期に達しましたという単純な一方的過程ではなく、受容期まで来たなと思われる人が何かのきっかけですぐ否認期になったり混乱期になったりする。つまり全部の心理状態、4つの段階がいつも心の中にある、可逆的であるというふうにみるべきではないかと思う。
(参考;『教師はなぜぼけるのか』筒井書房)

三好春樹のイラスト

 

4つの段階を行ったり来たり…

障害受容過程は、どうやら「段階説」ではなく「並列説」と考えるのが良さそうだ。4つの段階がいつも心の中にあって、行ったり来たりを繰り返しているのだ。

揺れ動くCさんの心。また家に閉じこもってしまった。今度は「否認期」に入ったのだろうか...。

 

さて、在宅サービスを提供する我々には、Cさんに対して一体何が出来るのだろう。三好氏は言う。

三好春樹
障害受容って、結局のところ何かというと、諦めでしょう。諦めであり、開き直りであり、そういうことじゃないかという気がするんですね。

 

あまり深く考えすぎない方が、逆に上手くいくのかも知れない。「揺れ動く心にそっと寄り添う」…そんな付き合い方をしようと心に決めた理学療法士Hであった。