朝5:30、相も変わらず外は暗い。
そして寒い。
車に乗り込むと、フロントガラスが凍って前が見えない。
外気温、なんと氷点下3度。
こびり付いた氷を溶かすべく、暖房ボタンに手を伸ばす。
回転数の上がったエンジン音と、乾いたエアコン音とが車内にこだまする。
襟を立て、子猫のようにうずくまり、時が経つのを静かに待つ。
かれこれ何分経っただろう。
一向に氷の溶ける気配が感じられない。
やきもきする…。
エアコンの吹き出し口近く、ようやく氷が溶け始めた。
真ん中に水滴が垂れ始める。
そしてその水滴は、じわりじわりとその隣の氷を浸食していく。
するとどうだろう。
今までゆっくり流れていたフロントガラス上の戦いが、ある瞬間から慌ただしく動き出す。
なかなか溶けずにヤキモキさせた氷の粒達が、水滴へと形を変えて一気に広がり、全ての氷を溶かしたのだ。
ここでふとひらめいた。
人間関係も同じだなと...。
世の中、どうしても合わない相手がいる。
努力して関係性を築こうとしているのに、
雪解けの気配すら感じられない。
でも…、それでも暖かい風を送り続けるのだ。
すると、一気に氷が溶けだす瞬間が訪れる。
途中であきらめたらダメ。
表面上変化が見えなくとも、内部では静かに化学変化を起こしているのだ。
南極北極の氷の記事より。
『北極圏のグリーンランドを覆う氷の表面が、ほぼ全域で溶けたことがNASAの観測で分かった。見解によると、原因は暖かい空気の塊が上空にとどまり、前例のない規模で氷が溶けだしたものとみている。グリーンランドを覆う氷の表面が溶けた速さは、ある時点で全面積の40%ほどだったのが、その後に急速に溶けだし、4日後には97%にまで達し、ほぼ全域で氷の表面が溶けたことが分かった…』
つまり、そういうことなのだ。
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