「パタカラ体操」をご存知だろうか。病院や施設で食前体操として行われることが多い体操である。今回はこの体操の意味について考えてみよう。
体操の効果
この体操には、様々な効果があるとされている。「言葉をはっきりと発する練習」のみならず、食べ物を「かむ力・飲み込む力」にも効果がある。また、かむ力が向上することで唾液の分泌が促され、口呼吸でなく鼻呼吸へとアプローチでき、更に口の乾燥や口臭予防にもなると言われている。
パタカラの意味
ぱたからの「ぱ」
唇を閉じる力を鍛える「ぱ」
口の中の動き
この発音は、唇をしっかり閉じる筋力を鍛えてくれる。食べ物(食塊)を口の中に保持して、こぼさないようにするために必要となる動きである。
「ぱ」の出し方
口をしっかり閉じる。口の中に息を溜めて内圧を高める。唇を弾くように勢いよく開き、溜めた息を強く吐き出して音を出す。
その他の訓練法
唇の周りの口輪筋という筋肉を鍛えよう。NHKあさイチ「万病のもと ドライマウス」で紹介されていた「ボタン体操」のまとめ記事「ダイソー商品の活用(24) ~ボタンで口輪筋体操~」をどうぞ。
ぱたからの「た」
舌の前方への動きを鍛える「た」
口の中の動き
この発音は、舌の先を上げる動きである。食塊を押しつぶしたり、口の奥に送り込む時の動きとなる。また飲み込みの際は唇を閉じて口腔内圧を高めるのだが、唇の代わりに口腔内をしっかり閉じる役割も担っている。
「た」の出し方
舌先を上顎に強く押し付け、息を溜めて内圧を高める。舌先を弾くように上顎から離し、溜めた息を強く吐き出して音を出す。
その他の訓練法
舌打ちが似たような口腔内の動きとなる。「た」の発音は舌を上顎に押し付けて息を吐くのだが、逆に舌打ちは舌を押し付けて息を吸うのだ。以下wiki より。
【舌打ち】
1.唇をすぼめないままでごく小さく(狭く)開ける。前には突き出さないこと(後述する)。
2.舌の一部を歯や上の歯茎あるいは上顎に密着させ、空気が漏れないようにする。舌の先端を上下の歯で軽く挟むか、舌の周囲を上の歯の内側や歯茎との境目付近に密着させるのが一般的。舌の中央部を盛り上げて上顎の中心付近に押し付けるなどしても実現できる。その場合は舌の先端は下顎(下の歯の内側付近など)に固定されている場合が多い。
3.その状態で、口から息をやや強く吸おうとしながら舌を喉の側や下側に引いたり、下顎を下げたりすると、一時的に舌と上顎の間の空間の気圧が下がる。さらに動作を続けると、舌が上顎から離れることによってこの空間が気密でなくなる。この時、空気がこの空間に急速に流入することによって音が出る。
(引用;Wikipedia)
ぱたからの「か」
舌の後方の筋肉を鍛える「か」
口の中の動き
この発音は、舌の奥(奥舌)を持ち上げる動きである。食塊が不意に喉の奥に流れるのを防いだり、飲み込みの際に鼻と口の通路を閉じて、食道への送り込みを助ける。
「か」の出し方
舌の後方(奥舌)を上顎に押し付け、息を溜めて内圧を高める。奥舌を弾くように上顎から離し、溜めた息を強く吐き出して音を出す。
その他の訓練法
うがいをする際に奥舌が働く。奥舌を締めて水が喉の奥に流れないようにしたり、奥舌を緩めて肺からの空気を通してブクブクしたりする。一歩間違えれば、肺に水が流れ込んでしまうような危険な技を我々は平然と行なっているのだ。詳細は、関連記事「常識を疑え4 ~上向き姿勢で食事介助をしたらダメなのか~」をどうぞ。
ぱたからの「ら」
舌を丸める動きを鍛える「ら」
口の中の動き
この発音は、舌のスムーズな動きを引き出す。口の中で散らばった食塊を舌先で集め、食塊を喉奥へ送り込む動きである。
「ら」の出し方
舌先を巻いて上顎に強く押し付け、息を溜めて内圧を高める。舌を前方へ弾くように上顎から離し、溜めた息を強く吐き出すことで音を出す。
その他の訓練法
「ら」の段を練習する。早口言葉「らりるれろ」「りるれろら」「るれろらり」「れろらりる」「ろらりるれ」など。更に「札幌ラーメンとろろいも」と5回連続で言う練習をしてみるとか。
その他 「タングトリル」も効果がありそう。「トゥルルル…」という巻き舌の運動である。
(参考;Bee vocal school)
また、舌の先で上顎をグルグルとなめ回すのも、良い練習になるだろう。
注意!
上記「その他の訓練法」については、「ぱたから」発声時の口腔内の動きに近いと思われる訓練法を提示しています。しかし医学的根拠や文献的裏付けはありませんので、施行するに当たっては、その点を十分理解して行なうよう宜しくお願い致します。
ぱたから体操の具体例
「パ」「タ」「カ」「ラ」の4つの言葉を使った体操の具体例をみてみよう。
①三三七拍子に乗せて「パタカラ」
手拍子に合わせて「パパパ、パパパ、パパパパパパパ」「タタタ、タタタ…」。だんだんテンポを速くしていく。
②パンダの宝物
以下の文章を3回ゆっくりと読んでみよう。『パンダの宝物は、パパ パンダからもらったラッパ。歩いてパタパタ、鳴らしてパラパラ。高かったラッパで、財布の中身は空っぽ』
(出典;「世界一受けたい授業」2016.11.5放送分より)
③季節に合わせた曲を「パタカラ」で歌う
さくら、こいのぼり、かたつむり、ももたろう等々...
④「パ」の付く言葉選び
「パ」の付く言葉は何でしょう。「タ」の付く言葉は何でしょう。「カ」の付く言葉は何でしょう。「ラ」の付く言葉は何でしょう。
⑤表情筋トレーニング「パタカラ」
ちょっと趣向が違うが…。表情筋を鍛えるための美容器具。もともと医療用に開発された「パタカラ体操」の語源にもなった器具。
⑥パタカラ体操と一緒に、「あ」「い」「う」「べ~」体操
<おまけの4コマ漫画>
『あいうべ~体操』
無料イラスト
パタカラ体操のイラスト(PNG透過性)をどうぞ。また資料作成例も置いてあるのでご自由に。
食事つながりで、もう1つ。
「食事時の頚の角度は?」という質問に対する答えは?。恐らく「前屈位」と答えると思うのだが、しかしその答えは100点満点ではない。実はこの答えは介護のセンスを問われる重要な視点であると考えている。お暇なときに、ご一読を。