介護現場で、「ちょっと聞いてくれる?」と相談を持ち掛けられたとき、真面目な職員ほど「何か良いことを言わなきゃ」「解決策を提示しなきゃ」と身構えてしまう。
だが、その「解決しようとする親切心」こそが、実は相手を一番追い詰めている。
元タレントの田代まさし氏が、薬物依存から立ち直る場所で一番救われたのは、「正しい指導」ではなかった。「また薬をやりたくなった」という、「最低の本音」を、そのまま吐き出せる場所があったからだという。
先ずは、4コマ漫画からどうぞ。
相談される人




相談は「片付け」ではなく「出し切ること」が目的
相談を持ち掛けるとき、人は「答え」なんて求めていない。
家族への恨み言、将来への絶望、誰にも言えない愚痴。これらは、誰かに「解決」できるような軽いものではないからだ。
彼女らが求めているのは、心の中に溜まったドロドロしたものを、外に放り出すこと。家の中にゴミが溜まったら、とりあえずごみ箱に捨てると思う。それと同じである。
あなたの仕事は、立派なアドバイスをすることではなく、ただの「高性能なゴミ箱」になることなのだ。
「正しい答え」は、相手の口をふさぐシャッター
例えば、利用者が「もう死にたい」と言ったとき、あなたは「そんなこと言わないで、孫のためにも長生きしなきゃ」なんて返していないだろうか?
これは「正しい答え」かもしれないが、プロの介護としては「最低の返答」である。
なせなら、その言葉を言った瞬間に、相手は「あぁ、この人には本当の気持ち(死にたいくらい辛いという本音)は言っちゃいけないんだな」と心を閉ざしてしまう。
「正論」は、相手の言葉を封じ込めるシャッターに過ぎない。プロなら、正論で相手を黙らせるのではなく、沈黙で相手の言葉を引き出すべきなのである。
「何もできない自分」にプロの誇りを持つ
「話を聞くだけで何もしてあげられなかった…」と落ち込む必要はない。
むしろ、「解決できないほど重い悩み」を、解決しようとせずに一緒に抱えてあげること。これこそが、最も高度な介護技術なのである。
あなたが「それは、お辛いですね」とうなづくだけで、相手の心に溜まった毒は、少しずつ外へ漏れ出していく。
あなたが「何も解決できなかった」と無力感を感じているとき、相手は「あぁ、やっと外に出せた」と一番スッキリしているはずである。
介護職は「本音が言える最後の場所」
世の中は「正しいこと」を言う人であふれている。だからこそ、介護現場くらいは「正しくないこと」を言ってもいい場所であるべきだ。
「家族が憎い」「薬をやりたい」「死んでしまいたい」
そんなドロドロした本音を受け止め、否定もせず解決もせず、ただ「ここに置いていっていいですよ」と笑っている。
そんな「人生のゴミ捨て場」のような存在になれたなら、あなたはもうその人の命を支える、かけがえのないインフラになっている。
