職場の人間関係を調整しようとして、結局皆から不満を言われ、夜一人「自分の力不足だ」と落ち込んでいないだろうか。
お局さんの機嫌を取り、新人の不安を解消し、上司の顔を立て、利用者の要望に応える。
これら全てを完璧にこなそうとするのは、あなたの努力が足りないからではない。それは、宇宙の法則として、解きようのない問題を解こうとしているからなのだ。
物理学が証明する「三体問題」の絶望
物理学には「三体問題」という有名な概念がある。二つの星が互いに引き合う動きなら、計算で予測できるのだが、そこに「三つ目」の星が加わった途端、その動きを完璧に予測することは不可能になるという理論である。
これを介護現場に当てはめてみよう。現場には、お局、新人、上司、利用者、家族…。三つどころか、無数の「星」がそれぞれ勝手な重力で引き合っている。
- お局は「楽をしたい」という重力
- 新人は「丁寧にやりたい」という重力
- 上司は「コストを下げろ」という重力
これらすべての重力バランスを保ち、全員を同じ方向に、完璧な満足度で動かすこと。それは物理学的に「答えがない」問題なのだ。
「最適解」ではなく「妥協点」
「全員が納得する答え」を探すのは、もうやめよう。そんなものはこの世に存在しない。
リーダーが目指すべきは、100点満点の「正解」ではなく、全員が40点くらいで「まぁ、破綻はしていない」という「妥協点」を見つけることである。
- お局には「少しだけ顔を立てる」
- 新人には「最低限の安全だけ保証する」
- 上司には「最悪の事態は防いでいると報告する」
全員が少しずつ不満を持っている状態こそが、実は「最も安定してシステムが回っている状態」なのだ。誰か一人100点満点で満足しているとき、その裏では必ず別の誰かが0点で、爆発寸前のストレスを抱えている。
「嫌われること」は、正しく機能している証拠
物理の世界では、物体が動くときには必ず「摩擦」が生じる。あなたがリーダーとして何かを決定し、現場を動かそうとすれば、必ずどこからか不満(摩擦)が生まれる。
もし、誰からも不満が出ないとしたら、それはあなたが何も動かしていないか、あるいはだれか特定の勢力に完全に飲み込まれている証拠だ。
「あっちからもこっちからも、文句を言われている」状態は、あなたが中心でバランスを取ろうと踏ん張っている、健全な証拠なのである。
結論
リーダーよ、自分を責めるのは今日で終わりにしよう。全員を納得させられないのは、あなたの能力が低いからではなく、この世界がそういう仕組み(三体問題)で出来ているからである。
「全員を幸せにする」という、美しくも傲慢な理想を一度捨てなさい。代わりに「今日はどこも爆発しなかった。よし、合格だ」と自分に声をかけてあげよう。
あなたが「全員納得」をあきらめた時、初めてあなたの心には余裕が生まれ、結果として嵐の中でも沈まない「しぶといチーム」を作ることが出来るようになるのだから。
【第4章】リーダーの役目は「高性能なフィルター」|板挟みで爆発する前に「いい人」を卒業せよ
【第5章】全員を納得させるのは「物理的に不可能」である|不満があるのは健全な証拠