なぜ「患側方向」に寝返りしたらダメなのか?麻痺した手足の「重し」の正体とは

先日、介護スタッフから次のような質問があった。

「片麻痺の利用者様で、いつも麻痺している方向(患側)に寝返る人がいるんです」

麻痺した肩を痛めるから止めてほしいんですけど、寝返りし易いからって言うんです。どうすれば良いのでしょうか…」。

患側方向へ寝返る

実は、教科書が「正しい」とする方向が、ご本人にとっては「ものすごくやりにくい方向」である場合がある。

今回は、身体が感じている「重さ」の正体を紐解いてみたい。

教科書はなぜ「麻痺のない方向」への寝返りを勧めるのか?

まず、なぜ専門家が「麻痺がない方(健側)に寝返って」と言うのか。主な理由は2つである。

①麻痺した肩に痛みが出る可能性がある

麻痺した側を下にすると、自分の身体の重みで、肩を痛めてしまう可能性があるから。

麻痺側に寝返ると下になった肩が痛い

②次の「起き上がり動作」へ繋がりにくくなる

寝返った後、起き上がるためには、腕の力が必要だ。麻痺した腕が下にあると、身体を支えて起き上がることが出来ない。

麻痺した上肢で身体を持ち上げられない
肘をついて身体を支えることが出来る

安全と自立を考えれば、確かに「麻痺のない方向(健側)への寝返り」が理想である。

それでも「患側方向」が楽に感じる理由

では、なぜご本人は「患側」が楽だというのだろうか?実は、そこには「重力の壁」がある。

①健側の足でベッドを踏み込み寝返る

健側(良い方の足)でベッドをポンと蹴れば、重力に従ってコロンと患側側へ転がることが出来る。これは確かに「楽」である。

健側の足でベッドを踏み込むことで麻痺側へころんと転がることが出来る

②患側の上下肢を「重し」と感じてしまう

寝返ろうとすると、麻痺した重い腕や足が「置いてきぼり」になり、それがズッシリとした「重し」のように感じられる。

健側に寝返る際、麻痺側上下肢が重しになってしまう


ご本人からすれば、「わざわざ重いものを引きずって寝返るなんて大変すぎる!」と感じているのだ。

じゃあどうすればいい?

「教科書通りにして下さい」と押し付ける前に、まずはご本人の「重いんだよ」という感覚を認めてあげよう。そのうえで、こんな工夫を提案してみるといい。

健側へ寝返る時、麻痺した腕や足を、あらかじめ介助者(若しくは自分)が、「身体の中心」へ寄せてあげるだけで、回転しやすくなる。

まとめ

「ダメ」という言葉は、ご本人のやる気を奪ってしまう。

「確かにこっちは重いですよね。じゃあ重くないようにちょっとお手伝いしますね」

そんな声かけ一つで、介護は「義務」から「一緒に取り組む工夫」に変わるのだ。

さて、そもそも寝返りが出来ない人に対しては、どうしましょう?以下の記事をどうぞ。

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