人はこう考えている。
「まず出来事が起こり、
それに対応する感情があとから出てくる」
「嫌いな人」が目の前に現れたら
それに対応する「嫌な感情」が出てくるのだ。
しかし心理学では、
そうではないと言っている。
「出来事そのものが感情を作るのではなく
その出来事をどう解釈したか」
が感情を作っているそうだ。
この考え方をABC理論という。
今回はこのABC理論を
ある出来事を例に
考えてみたいと思う。
ゴ・キ・ブ・リ
その出来事とは…
ゴキブリだ!
先日、利用者さんのストレッチを
しようと、靴を脱がせたときの出来事。
なんと靴の中から、ぺちゃんこになった
ゴキブリが出てきたのだ。

虫嫌いの私にとって、
ゴキブリは人類史上最大の敵である。
しかし目の前に利用者さんがいる手前、
「うわぁ!」と叫ぶ訳にもいかない。
私は男らしさを全面に出し、
涼しい顔で処理した。
(すぐに石鹸で手を洗ったけど…)
ゴキブリが嫌われる理由
なぜゴキブリは嫌われるのだろう。
・どす黒い色
・テカテカしたツヤ
・素早い動き
見ただけで寒気がする。
なぜ世の中にこんな生き物が存在するのか。
しかし心理学者によると
ゴキブリ嫌いは
本能ではなく「学習」
である可能性が高いと
言われている。
幼いころの記憶で、
・親が悲鳴を上げる
・周りの人が嫌がる
そんな姿を見て、
「ゴキブリ=怖いもの」
と学習していくという。
ABC理論で考えてみる
「ABC理論」をご存知だろうか。
これは心理学者アルバート・エリスが
提唱した理論である。
ABCとは、次の3つを意味する。
・A(Activating Event)
→出来事
・B(Belief)
→解釈や思い込みなど物事の捉え方
・C(Consequence)
→結果として表れた感情や気持ち
我々は普通、
出来事(A)→感情(C)
だと思っている。

しかし実際には、
出来事(A)→解釈(B)→感情(C)
という構造になっているのだ。

ABC理論の具体例
例えば、こんな出来事があったとする。
A(出来事)上司に注意された
このとき、感情は一つではない。
B(解釈①)自分はダメな人間だ
↓
C(感情)落ち込み
もしくは
B(解釈②)成長のチャンスだ
↓
C(感情)やる気
つまり、出来事は同じでも
解釈によって感情が変わるのだ。
ABC理論をゴキブリで考えてみる
ではゴキブリの出来事を
ABC理論で考えてみたい。
A(出来事)ゴキブリがいた
↓
B(解釈)気持ち悪い
↓
C(感情)ゴキブリ嫌い!
これは今の私の感情である。
ではB(解釈)を変えると
どうなるだろうか。
A(出来事)ゴキブリがいた
↓
B(解釈)彼は嫌われながらも
↓ 必死に生きている生き物だ
C(感情)少し愛しい…
…。
いや、やっぱり難しいか。
ABC理論の本当の意味
ABC理論は
感情を無理に変える方法
ではない。
そうではなく
自分がどんな解釈をしているのか
に気づくための方法である。
実は、出来事そのものが
我々を苦しめているのではない。
その出来事をどう解釈するかが
感情を作っているのだ。
介護の現場でのABC理論
ABC理論は、介護の現場でも
良く当てはまる。
例えば、利用者さんにこんなことを
言われたとする。
「あなたは介護が下手だね」
このとき、多くの人はショックを
受けるだろう。
しかしABC理論で考えるとこうなる。
A(出来事)下手だと言われた
↓
B(解釈①)自分はダメな介護士だ
↓
C(感情)落ち込み
しかし、別の解釈もある。
B(解釈②)この人は痛かった
↓ のかも知れない
C(感情)介助の練習をしよう
出来事は同じでも
解釈によって前向きな行動へと
変換できる可能性が出てくる。
さらに別の解釈もある。
B(解釈③)機嫌が悪かっただけかも
↓
C(感情)気にならない
出来事は同じでも、
解釈によって大きく感情は
変化するのだ。
我々は「解釈の世界」に生きている
我々は普段、
「出来事が感情を作っている」
と思っている。
しかし実際は、
出来事→解釈→感情
という順番である。
つまり我々は
事実の世界ではなく
解釈の世界に生きている…
そう言えるのかも知れない。
まとめ
もちろん
ゴキブリを好きになる必要は
全くない。
私も多分、
一生好きになれないと思う。
しかし一つだけ言えることがある。
それは
出来事が感情を作るのではない
ということ。
我々は、
自分の解釈によって
感情を作っている
のである。
もし誰かの言葉で傷ついたとき、
「この感情は事実だろうか」
それとも
「自分の解釈だろうか」
と考えてみる。
その一拍を置くことが、
少しだけ生きやすくするための
ヒントとなるかも知れない。
