【訪問リハから介護を解剖する 05】水分管理のパラドックス|なぜ彼らは喉が渇いても「いらない」と言うのか

訪問中にトイレによる理学療法士H
コンビニでトイレを借りたのでコーヒーを買う理学療法士H
トイレのたびにコーヒーを買うので置き場所がなくなって困っている
延ばトイレに行きたくなりトイレを借りてコーヒーを買うという悪循環

冒頭の4コマ漫画で、訪問リハビリの移動中に陥る「トイレとコーヒーの無限ループ」である。

コンビニのトイレを借りる申し訳なさから、つい不要なコーヒーを買ってしまう。トイレに行きたくて寄ったはずなのに、またコーヒーを飲んでトイレに行きたくなる。

何とも滑稽な自虐ネタだが、この根底にあるのは「他人の施設(トイレ)を無償で借りることへのささやかな罪悪感」だ。

本来、排泄は生物として至極当然の欲求であり、誰に気兼ねするべきものでもないはずだ。しかし私たちは、社会生活の中で常にこの「申し訳なさ」という感情を抱えながら生きている。

そして、ひとたび介護現場という特殊な密室に入った瞬間、私たちはこの当たり前の感情が、利用者にも存在していることをすっぽりと忘れてしまうのだ。

「認知症だから気遣いなどない」というプロの傲慢

現場で「あの人は水分を摂ってくれない」と嘆く職員は多い。脱水や便秘、意識障害を防ぐために、私たちは「身体のためだから」と必死に水分摂取を勧める。それでも彼らは、頑なに口を閉ざす。

そんな時、私たちは無意識のうちにこう結論付けていないだろうか。「認知機能が落ちて、喉の渇きが分からないのだ」「昔からワガママな性格なのだ」と。

ここにあるのは、「認知症になり、おむつをしている高齢者に、他者を気遣うような高度な羞恥心は、もう残っていないはずだ」という、介護職員側の恐ろしいほどの無意識の見下し(傲慢)である。

臨床の場で長年、数えきれないほどの高齢者の身体と向き合い続けて、確信していることがある。病が記憶を奪い、身体の自由を奪ったとしても、「他者に自分の下の世話をさせる屈辱」と「申し訳なさ」だけは、人間の最も深い場所に最後まで残り続けるということだ。

「水を飲まない」という、精一杯の生存戦略

利用者の視点に立ち、あなたの「リハビリ脳(深部感覚)」を極限まで働かせて想像してほしい。

帰らにとって、目の前に差し出された一杯のコップの水は、決して喉を潤す恵みなどではない。数十分後、あるいは数時間後に必ず訪れる「苦痛への片道切符」なのだ。

水を飲めば、確実に尿意が来る。ナースコールを鳴らし、忙しそうに走り回るあなたを呼び止め、平謝りしながら自分の下半身の世話を頼まなければならない。あの惨めで耐え難い瞬間の「予約票」なのだ。

彼らが水分を固く拒むのは、決してワガママなどではない。「これ以上、他人に迷惑を掛けたくない」「情けない姿をさらしたくない」という、人間として最後まで残された自尊心を死守するための、極めて論理的で悲しい生存競争(防衛線)なのである。

結び:一杯の水に、尊厳を添えて

「身体(脱水防止)」を救おうとするあまり、私たちはその奥にある「心(尊厳)」を窒息させてはいないだろうか。

教科書的な水分補給の重要性唱える前に、私たちに必要なのは、あの漫画で描いたような「他人のトイレを借りる申し訳なさ」を何十倍にも増幅して、相手の心に重ね合わせる想像力だ。

「この一杯の水を飲んだあと、この人は自分のタイミングで、誰にも気兼ねなくトイレに行ける環境にあるだろうか?」

この問いから目を背けたまま、ただ水を流し込むのは本当のケアではない。私たちが目指すべきは、強引な加水テクニックを磨くことではなく、「喉が渇いたから、水を飲もう」と利用者が自然に思えるような、「安心という名の環境」を構築することだ。

排泄の恐怖を上回るほどの安心感を、どう提供するか。その答えは、常識という鎧を脱ぎ捨てた先にある。あなたの「いつでもお供しますから、安心して飲んで下さいね」という言葉が嘘にならない、焦りのない深呼吸の中にこそ、理不尽な現場を優しく紐解くヒントが隠されているのだ。

トイレに対する「想像力」。
そして認知症者に対する「想像力」
も…

*認知症者に対する想像力を働かせよう

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理学療法士H
理学療法士。典型的なB型気質、一匹狼で徒党を組むのが大嫌い。他人の悩みや相談事を自分の事のように取り込んでしまい、体調が悪くなるのが欠点。趣味は、この世の人間関係の仕組みを解明すること。
当ホームページは、リハビリ脳を鍛えるためのサイトである。「リハビリ脳=日々の生活をリハビリ的視点で捉える事」と定義している。身体機能のリハビリのみならず、揺れ動く心のリハビリにも焦点を当てて考察している。
キネシオロジーと波動療法の専門店「こころのて整体院」を運営し、心と身体の癒しの場を提供している。
こころのて整体院
自立神経専門
管理者が運営する「心と身体の流れを整える」整体院です。病院では異常がないと言われた体調不良や、慢性的な疲れ、人間関係のストレスなど、心と身体のバランスが崩れることで起こる不調のご相談を多くいただいています。
当院ではキネシオロジーを用いて無意識の影響を確認し、波動療法で身体の状態を整えながら、占術(九星気学×易経)などの助言を得ることで、これからの人生の選択についてもサポートしています。
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