信頼できる相談相手の存在
何気なくテレビを見ていたら、元タレントの田代まさしさんが出ていた。番組のテーマは「覚せい剤依存症からの“回復”」。覚せい剤で3度の逮捕を経験したのち、現在はダルクという施設に通っているという。田代さんの言葉で特に印象に残った一節があったので、以下ご紹介したい。
『本当はすぐにでも出ていこうと思った。でも、ここダルクが自分の居場所なんだと思えるようになった。テレビでインタビューされると、「もう二度とやりません」と自分に嘘をつかなければならなかった。でもダルクでは、「薬をやりたいときもある」「でも今日1日はやらないように頑張る」と、正直な気持ちを話せる唯一の場所となった。1日ずつ我慢を積み重ねることで、結果的に今は覚せい剤を辞める事が出来ている』
(参考;TBS報道特集「覚せい剤依存症からの回復」 ttp://www.tbs.co.jp/houtoku/)
田代さんにとって、自分のありのままを出せる場所が出来たのは、本当に良かった事なのだと思う。ここでもう一つ、病院の受付業務をしている「Aさん」のお話しをご紹介しよう。
『夫婦で通ってくる外来の患者さんがいるんです。旦那さんの癌治療のために通院しているんですけど、受付から見ていると、旦那さんは奥さんに対して、いつも笑顔で「大丈夫だ」って言っているんですね。だから奥さんの方も、頑張って明るく振る舞っているようでした。でもとうとうある日、旦那さんの状態が悪化して入院になりました。先日奥さんが、私に「話を聞いてくれる?」って言ってきて。突然でびっくりしたけど、お昼休みだったのでベンチで話を聞きました。奥さんが言うには、「いつも面会に行くと旦那は笑って大丈夫って言う。けど痛くて辛いはずだ。私が面会に行くことで本人に無理させているんじゃないか」って、泣きながら話すんです。けど二十歳そこらの私が何を言ったらいいか分からなくて、ただ聞いてあげる事しか出来ませんでした…』
これら2つのお話しに共通することは、「信頼できる相談相手の存在」である。人は誰かに相談する時、「正しい答え」を求めるよりも「今の気持ちを分かって欲しい」という欲求の方が強いのではないかと感じる。それは「田代さんにとってのダルク」であり「奥さんにとってのAさん」だったのだろう。
介護施設の利用者が「嬉しかった」と感じる事
さて、私が勤める老健施設。利用者様にとっての「信頼できる相談相手」は、この施設の中にいるのだろうか。自分を振り返れば、「忙しい」という免罪符を利用し、ゆっくりと話をする時間を作れていなかったような気がする…。
ここで一つ、鶴見学園女子大学の田中教授が行なったアンケート調査から。
『介護施設を利用することで「嬉しかった」と感じたことを尋ねた質問では、「介護職員や知り合いとの日常会話」と回答した利用者が圧倒的に多く、また具体的に「嬉しかった言葉は何か」という質問にも、「普段の会話」「話しかけてくれること自体」「挨拶」という回答をした利用者が多かった。これをみると、利用者は介護職員らからの特別な言葉掛けや配慮を期待しているのではなく、日常生活の中で交わされる普段の会話が最も嬉しいと感じていることが伺えた』
(引用;「介護施設利用者と職員間のコミュニケーション調査報告」、鶴見学園女子大学教授 田中浩史)
当施設でのリハビリ目標は
リハビリ室では、平成28年度の「リハビリ目標」の中で、こんな目標を掲げてみた。
『 3)利用者から悩みなどの相談事を持ち掛けられる存在になる』
この目標を達成するための「具体的行動指針」は10項目。「よく周りから相談される人の特徴」NAVER様より。
<よく周りから相談される人の特徴>
・口が堅い人
・自分から挨拶が出来る人
・飛びぬけて色んな事が秀でていない人
・笑顔が多い人
・ポジティブな人
・誰にでも公平な対応が出来る人
・相談をしているときに嫌な顔をしない人
・自分の打ち明け話もしている人
・答えを押し付けるんじゃなくアドバスをしてくれる人
・相手の目を見て話す人
(引用 ttp://matome.naver.jp/odai/2146930868935553901)
やはりキーワードは「笑顔」。「笑顔の周りに人が集まる」って本当なんだと思う。
<おまけの4コマ漫画>
『相談される人』
組織の中で、必要とされる人物像がある。それは組織の「潤滑油」となるべき人物である。お暇があればご一読を。