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常識を疑え2 ~階段下降時に悪い方の足から降ろすのは何故か~

投稿日:2016年11月28日 更新日:

 

「常識を疑え」シリーズの第2弾です。介護の「常識」と呼ばれるものについて、ちょっと違った角度から論じてみたいと思います。今回のテーマは「階段下降時の足の出し方」について考えてみましょう。ご一読ください。

 

階段を降りる時の足の出し方

良いほうの足から降りたほうが降りやすいよ…!」。片麻痺の利用者様から、そんな声を聞くことがあります。教科書を読むと、「階段を降りる時は、悪いほうの足から降ろしましょう」と書いてあります。どういうことでしょうか。

 

 

昇りは健側、降りは患側

そもそも、何で階段昇降の「足の出し方」に決まりがあるのでしょうか。先ずは階段を降りる時の重心移動から考察してみます。

階段を降りる

上図を見てみましょう。左足を下の段に降ろそうとする時、反対の右足は「片足立ち状態」になるため、右足に大きな負荷が掛かります。更に、左足を下段に降ろす際の高さ調整をするため、右膝を徐々に曲げながら体重を支え続けなければなりません。「片足スクワット」をイメージすると分かり易いでしょうか。

この時の動作が、弱い麻痺した左足では困難なんですね。

 

 

 

階段を昇る

階段を昇る時の重心移動も同じ考え方です。先ず右足を上の段に乗せる際は、左足の一瞬の踏ん張りで右足を持ち上げる事が出来るでしょう。しかし次に、右足を踏ん張って身体全体を上の段に運ぶ際は、右足の大きな力が必要なんですね。

この時の動作が、弱い麻痺した左足では難しいんです。

 

 

ということで、教科書では「昇りは健側降りは患側」(行きはよいよい、帰りはこわい...)となっています。我々が安全に動作が出来るための「道しるべ」として、教科書の決まりがあるのです。

 

 

 

 

麻痺特有の症状

それでは、なぜ冒頭の言葉「良いほうの足からの方が降りやすい」となったのでしょう。
「わかりやすい移動のしかた」の著者である井口氏によると、悪いほうの足を振り降ろす際、足が内側へ偏位する(内転する)リスクを指摘しています。これは脳梗塞などの麻痺に伴う特有の症状と言われています。この内転症状が階段動作を不安定にするため、冒頭の言葉が出たのかもしれませんね。

階段下降時に麻痺側の足を降ろすと内転方向に偏位するイラスト

 

 

 

実際場面を見てみましょう

当施設の利用者様です。麻痺側(左足)を振り出す際に、下肢が内転方向へ偏位してしまい、不安定となっています。

 

 

 

良いほうの足から降りる場合があります

実は、悪い方の足から降りるのではなく、良いほうの足から降りる場合があります。以下の2点を考慮しましょう。

内転方向へ振り出してしまう場合

先ほど述べた通り麻痺側の足は内転しやすいため、良いほうの足を先に振り出した方が安定する人もいます。写真の利用者様は、自宅の階段を良いほうの足(右足)から降ろしています。「このほうが降りやすいんだ」とおっしゃります。

階段を降りる時に健側下肢から降ろす写真

 

 

筋力訓練として行う場合

前述たように、階段を降りる際は支持脚(上記写真では左足)に大きな負担が掛かります。あえて悪いほうの足を支持脚とすることで、筋力強化を図る場合があります。

 

 

 

装具の一番上のベルトを緩めましょう

階段を降りる時に装具を付けている場合、足首が窮屈に感じるかもしれません。その時は、一番上のベルトを緩めると、足首の自由度が広がるので楽になります。ただし、この方法は危険を伴いますので、試す時には必ず専門家の指導の下で行ないましょう。

 

 

 

常識を疑え

教科書に書かれていることを「忠実に」実践することは、身体の回復を目指す為にも、また安全を確保する上でも大切なことです。しかしもっと大切なことは、その理論が出てきた背景因子を理解することです。「なぜ起き上がりや移乗は健側からなのか」「なぜ服を着るのは患側からなのか」など、教科書に書かれている理由をきちんと語れる事が必要です。
冒頭の言葉、「良いほうの足からのほうが降りやすいよ…!」という利用者様の声をダメ出しするのか、それとも新たな可能性を探求することが出来るのか。もう一度、介護の「常識」を見直してみませんか。

 

ご精読ありがとうございました

 

 

 

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