脳卒中や脊髄疾患などで下肢の麻痺を患うと、歩行に大きな影響を与える。特に「尖足」といって足先を持ち上げる筋肉が正常に働かないと、歩く時に床につまずいてしまい転倒リスクとなる。それを防ぐため、装具を使って足首を直角に保持し、歩く時の助けとするのだ。
今回は「下肢装具」の装着方法についての注意点をまとめたので、お暇があればご一読を…。
3つのポイントを押さえよう
POINT1. カカトを深く入れる
カカトが奥まで入っていないと、装具の中で足が暴れてしまい固定が不十分となる。足首をつかんで奥まで押し込んであげよう。
POINT2. 足指をしっかり伸ばす
足指が曲がりやすい病態であるため、爪先を十分に引き伸ばしてあげよう。
POINT3. 膝を直角に曲げる
足首の角度は膝の角度に影響される(二関節筋の作用)。膝伸展位で足首は尖足になりやすく装具を付けにくい。膝屈曲位では腓腹筋が弛緩するため足首を直角にしやすくなる。装具を付けるときは、膝屈曲位で行なおう。
二関節筋の作用
二関節筋とは、二つの関節をまたぐ筋肉を指す言葉である。模式図を見てみよう。緑色の線は「腓腹筋」を示しており、膝関節と足関節をまたいで付着している。
膝を伸ばしてみる。すると腓腹筋は伸長され、踵を引っ張り上げる力が生じる。つまり、足首に下方向の力が加わることになるのだ。
膝を曲げれば、腓腹筋が緩み、足首を直角にしやすくなるということである。
装具の装着順序
「1.足首」→「2.つま先」→「3.ふくらはぎ」の順で締めていく。
装具の装着方法
①マジックテープが服にくっつかないように、重ねておく。
②膝を曲げた姿勢で装具を装着する。
③先ずは足首のベルトから。
④足首を押さえ、かかとを奥の方に押し込む。ここが緩まないように注意。
⑤次につま先のベルトを締める。その際、つま先が曲がっていれば十分引き伸ばすこと。
⑥爪先を伸ばしながら、ベルトを締める。
⑦最後に一番上、ふくらはぎのベルトを締める。
⑧出来上がり
あと1歩の配慮 ~服のしわを取る~
装具を付ける目的の一つは「尖足の防止」である。足先が下方向へピーンと伸びてしまうと、歩行する時に床に引っ掛かってしまうため、装具を付けて足首を直角に矯正する。
この時、装具にかかる圧は下図のようになる。青い矢印は、尖足に伴う下方向への「力点」。一方「作用点」は、赤い矢印ふくらはぎに掛かる。尖足が強いほど、ふくらはぎへの圧は高くなるのだ。
施設などで下写真のように「ズボンの上」「レッグウォーマーの上」「靴下の上」などから装着しているのを見かけたりするのだが、本来は「裸足」が基本である(装具作成時に裸足で型取りするため)。しかし、寒かったり当たって痛かったりする場合には、薄い素材であれば装具の中に履いても良いと思われる。
ただし注意。下図のような「服がしわくちゃ」状態で装着したらダメ。
何事においても「あと一歩の配慮」が大切だ。無用な皮膚トラブルを防ぐため、必ず服の「しわ」を取ってから装着しよう。