車椅子上の利用者様で、足のスネに傷がある人を見かける事がある。最初は「こんな所になんで傷が出来るんだろう…」と不思議に思っていたのだが、どうやらその原因は車椅子の「フットレスト」にあったようだ。

⚠️【重要】実践される方へ
100均素材を使った自作ツールには、PL法の適用外となるリスクや、現場の他職種との摩擦を生む可能性があります。実践前に必ず以下の記事をご一読いただき、現場の構造をご理解の上、自己責任でご活用ください。

車椅子のフットレストが「凶器」に変わる2つの原因
①「不完全な跳ね上げ」による衝突
フットレストが中途半端な角度で止まっていると、立ち上がり時に足を引き込む際、鋭いエッジがスネの前面を「カンナ」のように削ってしまう。



②フットレストをしっかり上げていても当たってしまう場合
その場合は「取り外し式のフットレスト」タイプの車いすを使うか、若しくは最終手段として「ねじを外して取ってしまう」のが良い。


100均素材で自作する「エッジ・ガード」5つのアイデア
フットレストという硬い構造物を、柔らかい素材で包囲し、「ぶつけても傷にならない環境」を先に設計する。現場にあるもので即座に対応できる5つのアイデアを紹介する。
厚めの滑り止めマットを巻きつけ、袋状にしてフットレストに差し込む。摩擦力が上がるため、足が滑り落ちるのも同時に防ぐ。

丈夫な布製のファイルケースを半分に切り、袋状に縫い合わせる。フットレストに被せる。




ジョイントマットをフットレストの形状に合わせてカットし、貼り付ける。




厚手の靴下をそのままフットレストに被せる。

利用者の足に厚手の靴下を履かせる。

【深層解説】正しく絶望し、賢く守れ|防げない傷と、隠ぺいする職員の心理学
利用者に対する「ぶつけないように気を付けて」という注意喚起には限界がある。だからこそ環境を変える(100均のカバーを被せる)わけだが、この記事を終える前に、私が臨床で味わった「残酷な真実」を共有させてほしい。
100均の防御を貫通する「剪断力(せんだんりょく)」
私が20歳の頃、紙のように皮膚が脆い利用者を担当していた。私はその方のスネを守りたくて、必死にフットレストへクッションを巻き、100均の素材を駆使して「最強の防御」を施した。
しかし結果は残酷だった。どれほど厚く柔らかい素材で覆っても、事故は起きた。高齢者の皮膚は、ぶつかる衝撃だけでなく、クッションとの間に生じるわずかな「ズレ(剪断力)」だけで容易に剥がれてしまう。
物理的な防御を完璧にしても、傷が出来るときには出来てしまう。それが介護という現場の実情なのだ。
傷を見て見ぬ振りする職員の「バグ」
この「防ぎきれない傷」の存在は、現場に恐ろしいほどの副産物を生み出す。
利用者のスネに傷を見つけたとき、「私がさっき移乗させたときのだ…」と気付きながら、そっと靴下を上げ、報告書を書かずに立ち去る職員がいる。
これは単なる不誠実ではない。「自分は優しい介護職である」という自己定義と「怪我をさせた」事実が衝突し、脳が一時的な安堵を求めて事実を削除(隠蔽)してしまう「認知不協和」というバグだ。
「なぜ怪我をさせた!」と犯人探しをする構造の職場ほど、このバグは加速し、職員は感情のスイッチを切って機能停止していく。
結び:靴下を被せる「本当の理由」
ならば、100均のエッジガードには何の意味もないのか?いや、そうではない。
フットレストを巻くという行為は、単なる物理防御ではない。それは現場に対して「ここは危険なエッジである」と警告を発し続ける、視覚的マーカーなのだ。
巻くことで、介助者の意識に「摩擦」への警戒が生まれる。そして何より、万が一傷が出来てしまった時、「やれるだけの環境調整はやった」という、職員の心が折れないための防波堤になる。
「死にたい」という言葉が全て教えないように、100均の靴下でも防げない傷はある。しかし、メカニズムを知り、限界を知った上で、それでもなお「少しでもリスクを減らそう」と手を動かすこと。その「抗い(あらがい)」の痕跡こそが、プロとしての誠実さである。
ダイソーの「もこもこ靴下」。その一足は、利用者の肌を守るためだけではない。過酷な現場で「加害者」になる恐怖と戦い続ける、職員のプライドと心を守り抜くための、最強の装備品なのである。







