老健の理学療法士が「介護とリハビリ」について考えます。

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技術論

常識を疑え8 ~なぜ服を着る時は患側からなのか~

投稿日:2017年7月25日 更新日:

介護の教科書には、正しい介助方法が記載されています。「移乗動作は健側方向へ」「階段を降りる時は患側から」「食事は前屈位で」など、様々な「介護の常識」が存在します。そして、その一つ一つにはちゃんとした理由や根拠があるんですね。

そこで今回は「片麻痺利用者の更衣動作」に着目し考察してみました。ご一読下さい。


 

■まずは「更衣動作」に関する国家試験を解いてみましょう
第99回看護師国家試験からの出題です。頑張って解いてみましょう。

<問題>
右片麻痺患者の着衣交換で正しいのはどれか。

1.右から脱がせ、右から着せる
2.右から脱がせ、左から着せる
3.左から脱がせ、右から着せる
4.左から脱がせ、左から着せる

<解答>
『3』 麻痺や障害がある場合には、健側(左)から脱がせて、患側(右)から着せるのが原則である

更にもう一つ、介護福祉士のテキストを覗いてみましょう。

麻痺の無い側から脱ぎ、麻痺のある側から着る脱健着患で

(介護福祉士実務者研修テキスト第2巻 介護Ⅰ、中央法規、p384)

以上より、更衣動作の原則は「脱健着患」、つまり健側から脱いで患側から着るのが正解です。

 

 

 

■Y○HOO知恵袋より
さて、ネット上の掲示板に「更衣動作」に関する質問がありました。

<質問> 服を着るとき、なぜ健康な腕や脚から脱がして、悪い方から着せるのですか?

あなたなら、どう答えるでしょうか。「教科書に書いてあるから…」では、余りにも寂しい回答ですよね。

 

 

■服を着る時は患側から
服を着る時の動作方法を見てみましょう。以下の図は、教科書に書かれている「右片麻痺者が服を着る動作」です。「脱健着患」ですから、服を着る時は患側からですね。

①袖口を確認します

患側から服を着る1

②袖口に患側の手を通します

袖口に麻痺手を通す

③患側の肩を通します

麻痺側の肩を通す

④健側方向へ服を引っ張ります

健側方向へ服を引っ張る

⑤袖口に健側の手を通します

健側の袖に手を通す

⑥良く出来ました

 

 

■健側から着たらダメなのか
それでは、逆に健側から服を着たらどうなるのでしょうか。図を追いながら考えてみましょう。

⑦袖口を確認します

⑧健側の手を通すのですが、片手で通すのはなかなか大変です。

⑨手を通したら、健側の肩まで引き上げます

⑩患側の肩を覆います。

⑪ここまでですか…。麻痺した手を袖に通すことは、とても難しいんですね。

 

 

■患側の麻痺した手を通す為には、袖に「ゆとり」が必要
図の「④、⑤」をもう一度、見返してみましょう。片側の袖に腕を通した後なので、反対側の袖には「ゆとり」がありません。この状態で麻痺した手を通そうと思っても、下図のように大きな可動域が必要とされる為、痛みを誘発するリスクが高いんです。


 


 

 

■利用者本位で考えよう
更衣動作は「脱健着患」と教科書に書かれています。でも実際の場面で「あれっ、どっちから着せるんだっけ?」と忘れてしまうことがありませんか。
でも大丈夫。そんな機械的な言葉を覚えなくとも、利用者本位で考えれば、以下の表現がすぐに思い浮かぶと思いますよ。 

<本日の結論>
袖に「ゆとり」があれば、相手に痛みを与えません
よって、袖に「ゆとり」があるうちに、患側上肢を通してしまいましょう。

 

 

■常識を疑え
教科書に書かれている「介護の常識」と呼ばれるものについて、その内容を忠実に守って仕事をすることは、とても大切なことだと思います。しかし、表面上の言葉を「ただ」なぞって仕事をするだけでは駄目なんですね。その原理原則が生まれた背景因子を理解することが必要です。「脱健着患」なんて難しい言葉に振り回されず、利用者本位の介護を追求していけば、自ずと新しい「常識の解釈」が生まれてくるものだと思っています。


 

 

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