老健の理学療法士が「介護とリハビリ」について考えます。

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技術論

常識を疑え1 ~立上がりの時は足を引かなくちゃ駄目なのか~

投稿日:2016年11月25日 更新日:

「常識を疑え」というテーマをお話ししましょう。介護の「常識」と呼ばれるものについて、違った角度から論じてみたいと思います。第1弾は「立ち上がる時は、足を引いた方が良いのか」です。ご一読ください。


 

■立上がる時は足を引いて
「足を伸ばしておいた方が立ちやすいです…」。こんな声に出会うことがあります。教科書を読むと、「立上がりの時は、前屈みで足を引く…」と書いてあります。どういうことでしょうか。

 

■立上がり動作のポイントは3つ
そもそも、何で立上がり時に「足を引く」のでしょう。立上がり時の動作を分析してみます。ポイントは3つ。「浅く座る」「足を引く」「身体を前傾させる」です。まずは浅く座り直します。これは、床にしっかり足を付け身体を前傾させやすくする為ですね。因みに移乗介助をする時、この浅く座らせる介助をしない人が多い印象を受けますが、介助のしやすさに大きく影響するので是非実践しましょう。次に「足を引く」動作です。これは足の位置を後方へ移動させ、身体を前に倒し易くする為です。そして「身体を前傾」させて立ち上がります。この時の頭部の動きは、「前下方へ移動し、頭が膝を超えたら上方へ」という軌跡をたどります。

 

■膝を伸ばす…?
それでは、冒頭の言葉「足を伸ばしておいた方が立ちやすい」を、どう考えたら良いのでしょうか。

下写真A/Bを比較してみましょう。Aは足を引いて立とうとしています。Bは足を伸ばして立とうとしています。どちらが立上がり易いでしょうか。
これは一目瞭然で「A」、足を引いて立つ方法ですね。

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次に写真C/Dを比較してみます。Cは低い椅子からの立上がりで、膝が深く曲がっています。Dは高い椅子からの立上がりで、膝の角度は緩やかです。どちらが立上がり易いでしょうか。
これは一目瞭然で「D」、高い椅子からの立上がりですね。

低い椅子からの立ち上がり時は膝の角度が大きい

つまり写真C/Dにおいては、「膝の角度が深い=立上がりが難しい」「膝の角度が緩やか=立上がりが楽」という方程式が成り立ちます。

 

■膝の角度のみに注目すると…
もう一度、写真A/Bを見てみましょう。今度は「膝の角度」のみに注目してみましょう。

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どうでしょうか。Aは膝の角度が深く、Bは膝の角度が緩やかです。写真C/Dで述べたように「膝の角度が緩やか=立ち上がりが楽」なんでしたよね。膝の角度のみで議論すれば、「B」のほうが立上がり易いという矛盾した結果となるんです。

 

■足を引かない
つまり「足を引かないで立上がること…」、この方法論を否定しないということなんです。筋力の弱い人にとって、足を引いて膝を深く曲げることは、まるで低い椅子から立ち上がるかのように感じさせます。そこで、膝を伸ばし足をつっかえ棒のようにして、腕の力で身体を引っ張りあげる事が出来たなら、自力で立上がる可能性が残されます。当たり前のように「足を引いて前屈み」を指導することが正しい事なのか、もう一度よく考えてみましょう。

足を引かないで立上る写真

 

■常識を疑え
教科書に書かれていることを「忠実に」実践することは大切なことです。しかしもっと大切なことは、「その人にとってどうなのか…」ということです。冒頭の言葉、「足を伸ばしておいた方が立ち易いです…」という声をダメ出しするのか、それとも新たな可能性を探求することが出来るのか。もう一度、介護の「常識」を見直してみませんか。

 

ご精読ありがとうございました



(補足 ~
片足を半歩前へ出す場合があります~)
足のステップ動作が困難な人は、最初の足の位置のままで移乗動作を完結させようとします。結果、下図のように足がねじれてしまうんですね。

 

このねじれを防ぐ為に、下図のように「片足を半歩前へ出す」場合があります。


 

 

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