老健の理学療法士が「介護とリハビリ」について考えます。

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技術論

常識を疑え4 ~上向き姿勢で食事介助をしたらダメなのか~

投稿日:2016年11月29日 更新日:

今日は「常識を疑え」シリーズの第4弾です。介護の「常識」と呼ばれるものについて、ちょっと違った角度から論じてみたいと思います。テーマは「食事介助時の頭の位置」についてです。ご一読ください。



嚥下しやすい姿勢とは

嚥下しやすい食事姿勢は、頭頚部前屈位であるとされています。この姿勢は飲食物が気管に入りにくく、また食道方向へ通りやすくなるため、誤嚥が起こりにくいとされています。

食事姿勢がずっこけ座りで良くないイラスト 食事姿勢が前かがみで良い姿勢のイラスト

 

 

気道確保
下図は気道確保の方法を示しています。下顎を挙上すると気道が広がり、肺への空気が通りやすくなるんですね。(気道確保については、関連記事「常識を疑え7」をご参照下さい)

気道確保のイラスト

 

 

図を90度回転させてみました。さて、この姿勢で食事介助したらどうなるでしょう。

下顎が挙上して気道が広がり、口に入った飲食物は一気に肺へ流れ込みそうです。特に水分などを想像したらちょっと怖い気がしますよね。当然行なってはいけない食事姿勢として、教科書にも書かれています。

 

 

しかし、ちょっとここで視点を変えてみましょう。次の写真を見て、皆さんはどう感じますか…。

176
(引用 http://gahag.net/006387-drinking-water-couple/)

177
(引用 http://gahag.net/002424-mother-baby-milk/)

 

これらの姿勢を想像できたでしょうか…。
我々は知らないうちに、このような上向き姿勢(後屈位)で飲んでいたんですね。それでは、どうしてこの姿勢でムセないのでしょうか。

ひらめき、確かに

 

 

奥舌を使う
図は口の中の模式図です。上向き姿勢で水を飲むとき、大切な役割を担っているのが「奥舌」と呼ばれる部分です。その名の通り舌の奥の方を指すのですが、上向き姿勢では口の中の水は、重力で一気に気道の奥へ流れていきます。それを奥舌が防いでくれているんですね。奥舌に力を入れたり緩めたりすることで、喉の奥へ流れる水分量とタイミングをコントロールしています。

 

 

■奥舌の大切さが分かる「危険な実験」
この実験は、むせる確率が非常に高く、自信の無い人は絶対にやらないで下さいね!

【実験】

①口の中に水を含む
②上を向く

③口を開ける
④上を向いて口を開けたまま、水を飲み込む

因みに、この飲み方は俗称「インド飲み」と言うそうです。インドでは、ペットボトルの水を回し飲みする際の「衛生面」への配慮から、このような飲み方をすると言われています(諸説あり)。

インド飲みをする理学療法士

そういえば、日本でも同じ飲み方をする人を見た事がありました。ラグビーの「魔法のやかんの水」は有名ですよね。ドラマ「スクールウォーズ」の中でも、そんなシーンがあったような気がします。また「ドリフ大爆笑」では、やかんの水を使ったコントが多数ありました。因みに、私の一番押しは「ドリフ大爆笑~もしも過酷な刑事の取り調べがあったら~」です。いかりや長介さんの「奥舌コントロール」は絶品でしたよ!


(引用;ドリフ大爆笑~もしも過酷な刑事の取り調べがあったら~)

 

理学療法士がムセるイラスト

 

 

 

奥舌コントロールの鍛え方
①うがい訓練
うがいのメカニズムを考えてみましょう。まず口の中に水を含みます。上を向いて口を開けたら喉奥に水が流れてしまうので、奥舌でブロックしておきます。どうやってブクブクするのかというと、まず鼻から吸った空気を肺に溜め込みます。次に奥舌を緩めて空気を通す隙間を作ると同時に、肺に溜めた空気を一気に吐き出します。この空気を使ってブクブクするんですね。そして空気を止めると同時に、再度奥舌でブロックします。一歩間違えれば、肺に水が流れ込んでしまうという、とてつもない危険な業を我々は行なっているんですね。もしかしたら、毎日のうがいが将来の誤嚥リスクを減らしてくれるかも知れません。
うがいをするイラスト

②パタカラ体操の「カ」
パタカラ体操をご存知ですか。このパタカラの「」は、「奥舌音」と呼ばれる発音形態です。だから「カ行」の発音を練習すると、奥舌を鍛えることが出来るんですね。逆に「カキクケコ」がはっきり言えない人は、奥舌コントロールが出来ていない可能性があります。

パタカラ体操の「カ」は奥舌音のため、練習しているイラスト

 

 

常識を疑え
「なぜ食事は前屈位なのか」について考えてきました。後屈位で水を飲んでいる自分の姿に、気づいていた人はいますか。この点に気付いて、それを突き詰めて考えることは、新たな可能性を生み出す原動力になるはずです。もう一度、介護の「常識」を見直してみませんか。

 

ご精読ありがとうございました


 

 

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