老健の理学療法士が「介護とリハビリ」について考えます。

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技術論

たった週1回の運動で筋力増強が図れるか?

投稿日:2016年11月23日 更新日:

■たった週1回の運動で筋力増強が図れるか
「週1回通所リハビリに通い始めたら動きがよくなりました…」。
実際このような声を聞くことがあります。しかし文献にもよりますが、筋力増強には負荷の掛かる運動を、週2~5日行なうとされています。本当に週1回の運動で筋力が付くものなのでしょうか。


 

■北斗の拳に学ぶ
「北斗の拳」という漫画をご存知ですか。主人公のケンシロウは、「人間は潜在能力の30%しか使うことが出来ない。俺は残りの70%をも使うことが出来る・・・」と言います。

 

まぁ、これは漫画の世界の話なのですが、しかし心理学者ウィリアム・ジェームスは、「人間は潜在能力の7%しか活用していない」といいます。心理学者ユングは、「人間は自分の能力の50%だけで生活していて、残りの50%は置きっぱなしにしている」といいます。その他文献を調べてみると、どうやら人間は最大筋力の半分程度しか使えていないようです(諸説あり)。人が追い込まれた時に、とんでもない力を発揮する「火事場の馬鹿力」という表現からも想像出来ますね。

 

■「筋力」と「筋出力」
筋肉は一本の塊ではなく、沢山の細い筋の線維が束になって作られています。弱い力を出すときは少ない本数の筋線維が働き、逆に強い力を出す時は多くの筋線維が動員されることになります。つまり、「さぼっている筋線維がある」ということなんです。
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人は日常生活において、エネルギーを効率よく利用するために、必要最小限の筋肉しか使っていません。私がリハビリ研修時代に経験した印象深い出来事をお話ししましょう。握力を測る際、「強く握って下さい」と声掛けして行なおうとした所、先輩に「だめだだめだ、こうやるんだ!そこで見てろ!」と言われてしまいました。握力測るだけなのに何で…? と思って見ていると、先輩は訓練室に響き渡る大声で叫び出しました。「ハイッ!握って。もっと強く!もっとぉぉ…」。
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なんか怪しい世界みたいですが、こうしないと正確な残存筋力は測れないといいます。普通に測った時と全然違う値が出るんですね。つまりポイントは「さぼっている筋線維を働かせる」事。だからジムなどに行って普段動かしにくい部位を動かすと、この筋線維が目を覚まして活動するようになります。たまに運動して筋肉痛になるのは、この筋肉がびっくりしたためだとも考えられます。この「さぼっている筋線維を刺激して働かせる」こと、これが「たった週1回の運動で筋力が増強される」一つの理由と考えられます。

ちなみに北斗の拳ケンシロウ曰く、100%の筋力を出してしまうと、自分自身の筋肉や骨を痛めてしまうそうです。だから脳は自らの身体を守るため、筋の出力を抑制する信号を出しているんですね。逆に、運動選手が競技の時に大きな声を出したり、自己暗示トレーニングを行なったりしているのは、この抑制を解除する為といえます。これは「筋力増強のために運動する」という考え方とは別の視点であり、「筋力増強のために脳をコントロールする」と表現できるため、とても興味深いですね。

 

■行動変容を起こす
聞きなれない言葉かと思いますが、これは厚生労働省の「健康づくりのための運動指針2006」に出てくる言葉です。簡単に言うと、通所リハ等で運動したことが刺激となり、普段の行動が変化することをいいます。いままで自宅ではゴロゴロと寝ていることが多かった人が、通所リハの運動を真似て自宅で運動をするようになったとか、通所リハの運動で自信が付いて行動範囲が広がったなど、週1回の運動で行動変容を起こし、筋出力を改善できる可能性があることが分かってきています。

通所リハの理学療法士に教わった運動を家でもやってみようとする利用者様

 

■運動を継続すること
最後のポイントは「運動を継続すること」です。筋肉がさぼらないように、刺激し続ける事なんですね。実はこれが簡単なようで中々難しい…。「絶対安静の状態では、1週間で10~15%の筋力低下が起こる」「不動により低下した筋力の回復には、一般的に少なくとも廃用状態に陥ったのと同じだけの時間がかかる」「以前の状態まで回復するには2倍ないしそれ以上の期間を要する」などの指標は、覚えておきましょう。
(参考;「標準リハビリテーション医学」津山直一 監修)
(参考;「リハビリテーション実践ハンドブック」S.J.ギャリソン 著)


 

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